軍部の支配が強まる日本
昭和に入って間もなくの1929年『世界恐慌』が襲ってきたんだ。
アメリカのウォール街の証券取引所で、株の大暴落があったのが発端ね。
第一次世界大戦後、アメリカも輸出を中心に、ものすごい好景気だったんだ。
アメリカにお金がジャンジャン入って来るわけ。
そのダブついたお金で、みんな株を買ってたんだ。
靴磨きの少年でさえ投資を薦めた程だ。
で、過剰な投資が続いていたんだけど「株価が実質より上がり過ぎればいつかは下がる」ってのが株でしょ。
ある日、売りが少し多くなって、株価が予想以上に下がってしまったのね。
これを新聞が、『株価が大暴落』って報じたもんだから大変だ。
途端に売りが続出して、株価は急落し、ついには大暴落してしまったんだ。
もう、株券が紙くずになって、投資家はパニックさ。
銀行が相次いで倒産した程なんだよ。
この影響は、ヨーロッパにも飛び火したね。
突然、オーストリアの大銀行が破綻。
次いで、ドイツ第2位の銀行も破綻。
こうやって、各国の銀行が次から次へと倒産して行ったんだ。
そうなると、当然、倒産する一般企業も続出するでしょ。
一般企業がバカバカ倒産すれば、当然、失業者が多くなるよね。
そこで、各国は対策に大慌てさ。
アメリカは『ニューディール政策』で、テネシー川にダムを作る事にして雇用を生み出したんだ。
イギリスやフランスは『ブロック経済』って政策をとったんだ。
外国からの輸入品に高額な関税をかけて、他国の商品を買わせず国内産業を守る政策だ。
イギリスやフランスは、植民地をいっぱい持ってたからできた政策なんだよ。
ドイツやイタリアは、植民地が無いから『ブロック経済』なんて取れないでしょ。
第一次世界大戦からやっと復興しつつあったドイツなんて、一気に悲惨な状況になってしまったんだ。
なんと、失業率は30%にもなっちまった。
10人に3人は仕事が無い! って状態だ。
そんな状況に失望した人々は、強いドイツの復活を望むようになってくるんだ。
その期待を受けて台頭してきたのが、ヒトラー率いる『国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)』だ。
イタリアも同様。
国粋主義のムッソリーニ率いるファシスト党が台頭してきたんだ。
こうやって、ドイツもイタリアも強い国の復活を目指して、ファシズムに走って行くことになるんだ。
で、日本は?って言うと、好調だった生糸の輸出が急激に落ち、株の暴落で、やっぱり会社倒産が続出。
農村では、娘を売る身売りや欠食児童が急増して社会問題までになったんだ。
で、日本は、イギリスやフランスのブロック政策で、事実上締め出されたでしょ。
だから、満州や台湾などのアジア地域との貿易を積極的に行って、なんとか持ち直す事ができたんだ。
そうなると、「満州は日本の生命線だ」って、よりいっそう大陸進出を求めて行くようになったのね。
話は変わるけど、高性能の日本の艦艇に脅威を感じた国が集まって、『ロンドン海軍軍縮会議』があったのね。
日本政府は、「他国との軍事的なバランス」「軍縮による海軍予算の削減」って、思いがあったんだけど。
そこで、「対米7割弱」の条件で調印しちゃったんだ。
でも、これに軍部の一部は、非常に不満なわけ。
「なんだよ、重巡洋艦保有量は対米の6割じゃんか!それに潜水艦保有量が少ない!」
「だいたい、軍の統帥権は天皇様だろ!天皇様の承諾無しに、なに勝手に調印してんだ!憲法違反だ!」
って、反発が起こってしまったんだ。
この事に、海軍の青年将校達は、条約を締結した総理に不満を持っていて襲撃の機会を狙ってたんだ。
そんな時に内閣が代わっちゃって、新たに首相になったのが犬養毅。
彼も大陸進出反対で、軍縮派だったんだ。
ついに、青年将校達の怒りが爆発して決起してしまう。
海軍の青年将校達は、首相官邸に乱入し犬養毅を暗殺。
「話せば分かる」「問答無用、撃て!」てな結末だ。
1932年5月15日の『五・一五事件』ね。
最終的には、昭和天皇様の勅命で収拾したんだよ。
一方、陸軍内部にも現状に不満をもった青年将校達がいたんだ。
「政治家と大企業との癒着が問題だ!不況の打破が必要だ!天皇様の周りの政治家が悪い!」てね。
彼らは、「天皇様の親政が実現すれば、腐敗政治も農村の貧困も改善できる」って考えていたんだ。
で、ついに、この『皇道派』って言われる集団が決起するわけ。
「昭和維新」「尊皇討奸」をスローガンにして、1483名の兵隊を率いてクーデターを起したんだ。
1936年2月26日、『二・二六事件』が発生。
彼らは、斎藤内大臣、高橋蔵相、渡辺教育総監などを殺害してね。
日本の政治の中枢である永田町、霞ヶ関、赤坂、三宅坂の一帯を占領したんだ。
これに、昭和天皇様は大激怒だ。
武力鎮圧するように討伐命令が発せられたんだ。
それで、反乱軍に対し投降するように、ラジオ放送やビラを捲いて呼びかけたんだよ。
下士官兵ニ告グ
一、今カラデモ遅クナイカラ原隊ヘ帰レ
二、抵抗スル者ハ全部逆賊デアルカラ射殺スル
三、オ前達ノ父母兄弟ハ国賊トナルノデ泣イテオルゾ
これには、陸軍の青年将校達は驚いたね。
「えっ! 尊皇討奸のクーデターなのに逆賊になるのか?!」
陸軍の青年将校達の思いは、天皇様に通じなかった。
この投降の呼びかけで、多くの兵士が投降しちゃったんだよ。
こうやって、このクーデターは、あっけなく終わってしまったんだ。
その頃の内閣は、現役軍人しか陸海軍大臣に就くことができないわけ。
だから、軍の協力なしに内閣を維持する事はできなくなってしまったんだ。
そうやって、軍部の勢力は、しだいに強まっていったんだ。
もう、政党政治や政党内閣は終わりを迎えようとしている。
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昭和に入り、世界恐慌が世界中を襲う。
これを打開するために各国は躍起になるが、日本は満州重視の政策を行う。
軍部の青年将校の反乱もあり、軍部の発言力は増大する。
そして、ついに満州国占領と軍部の暴走が始まる。 >>> 満州事変は軍部の暴走
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